希少な生きもののすみかや、将来世代に引き継ぎたい美しい風景であっても、保護区に指定されず、失われていく自然がたくさんあります。このような自然を未来の子どもたちへ残していくために、自然保護助成基金と日本ナショナル・トラスト協会は、各地のトラスト活動を支援し重要な土地を確保していくための助成制度を、2005年に創設しました。
絶滅の危機にある動植物や、失われ続けている自然環境を守るために、ナショナル・トラストに取り組む、全国の方々からのご応募をお待ちしております。
助成による取得地阿賀野川沿いの三日月湖「十二潟」の一部 1.6ha
助成額332万5千円(第13期)
助成内容土地購入費、所有権移転登記費、案内看板の設置工事費
採択のポイント
希少種や地域固有種の存在
「十二潟」は、大正から昭和にかけての阿賀野川改修工事によって残った三日月湖(約6ha)です。環境省の絶滅危惧Ⅱ類で、新潟県の絶滅危惧種に指定されているアサザやガガブタをはじめとする動植物161種が、調査で確認されました。アサザは県内では最大の群落です。
土地を守る緊急性
昭和35年頃までは、地域の子どもたちの遊び場や農業の貴重な水源となっていましたが、改修により廃川となった後は周辺住民への払い下げが進んでいました。十二湖周辺では産廃処理場としての埋め立てが進むなど、その存続が危ぶまれていました。
地域の宝を守りたい!という熱意
こうした状況を改善するため、新潟の方言でとてもよいところという意味の「いいろこ」の名が入った団体を設立。見学者用デッキの整備、草刈り、清掃、観察会の開催など、地域と関わりながらさまざまな活動を行っています。地元の小学生も活動に参加し自然に触れることを通して、その環境の大切さを学んでいます。
助成の結果
土地を取得したことで、不法投棄対策の強化や観察地の整備につながりました。そして何よりも、十二潟の埋め立てを防ぎ、貴重な植物が生育する水面を守ろうとする関係者の意識が大きく向上しました。
助成による取得地豊かな里山環境が残る通称「熊井の森」内の土地 1.5ha
助成額100万円(第15期)、350万円(第16期)、180万円(第17期)、170万円(第18期)
助成内容土地購入費、土地賃貸費、所有権移転登記費、看板の設置工事費、トラスト地の草刈りにかかる費用
採択のポイント
希少種や地域固有種の存在
熊井の森は、戦後、産廃施設やゴルフ場の建設など、次々と開発の計画の対象となりながらも開発を免れ、100haものまとまった面積の里山環境が奇跡的に残っている場所です。この森には全国的にも希少なモミ群落や、キンラン、オオタカ、トウキョウサンショウウオなど、絶滅危惧種が多数みられる生物多様性スポットとなっています。
土地を守る緊急性
近年、日当たりの良い南側に向けた斜面を中心にメガソーラー開発の動きがあり、トラスト活動により開発を未然に防ぐ必要性が高まっています。熊井の森内には私有地も数多くあり、地権者の高齢化により土地を手放さざるをえない例が増えています。
地域の宝を守りたい!という熱意
ゴルフ場開発計画が消滅し、熊井の森の約2割を占める計画予定地は町に寄付され町有地となっており、その他は私有地です。こうした地権者や近隣住民に熊井の森の価値、素晴らしさを伝え、連携を進めるため、広報誌やウェブサイトを通じた発信やコミュニケーションを精力的に進めています。
助成の結果
「熊井の森」内の多くの地権者や地元住民に対して、土地が開発用地としてではなく、自然資本として価値があることを改めて発信するきっかけとなりました。トラスト活動を開始して、複数の地権者から「自分の土地を買ってほしい」との問い合わせがあり、トラスト地の拡大につながっています。助成金を活用して取得した土地は、森全体からみると小さな土地ですが、貴重なモミの群生林や水源林などが含まれ、自然保護上、重要な場所が守られました。
助成による取得地愛宕山の山頂 6,056m2(H29)、19,264m2(R2)
助成額250万円(第13期)、350万円(第15期)
助成内容土地購入費、所有権移転登記費、看板の設置工事費
採択のポイント
希少種や地域固有種の存在
軽井沢は東京近郊の観光地として商業施設や別荘地などが点在している地域にも関わらず、多くの野生動物が生息しています。愛宕山の山頂付近では、カモシカやツキノワグマ、絶滅危惧種のオニヒョウタンボクなどの生息が、調査によって確認されています。
土地を守る緊急性
浅間山・離れ山と共に軽井沢を代表する愛宕山。山頂には3つの神社があり、太古の昔から畏敬の念が込められている山です。しかし、その山頂の土地が売却される動きがあり、早急に土地の取得をすすめる必要がありました。
地域の宝を守りたい!という熱意
観光地という地の利を活かし、カフェに広報デスクを置き音楽ライブを行って会員を増やしたり、専門家や地元ボランティアを募り動植物の生態調査を行うなど、精力的な活動を続けています。愛宕山の自然を守るだけでなく、自然を活かした地域文化や産業の発展も目指しています。
助成の結果
土地を実際に取得したことにより、地域住民や関係者に愛宕山の森を守ることへの本気度が伝わり、自然保護への理解が進みました。土地を取得してから会員や来訪者が増加しており、同会への信頼度が高まっているようです。また、トラスト活動を開始したことで、愛宕山周辺だけでなく軽井沢町全体に活動範囲を広げる道筋が見えてきました。
助成による取得地タンチョウもすむラムサール条約登録湿地に隣接する森と湿地 95.8ha
助成額579万円(第4期)、50万円(第5期)、50万円(第6期)
助成内容土地購入費、登記費、看板制作費、自然環境調査費
採択のポイント
希少種や地域固有種の存在
国内で三番目に大きな湿原、霧多布湿原。貴重な泥炭地にはエゾカンゾウをはじめ多くの花が咲く「花の湿原」として知られ、ラムサール条約登録湿地であり北海道遺産の選定地でもあります。この取得地はタンチョウの生息地である沼と隣接した、希少な野生動植物の生息地となっています。
土地を守る緊急性
3,168haある霧多布湿原のうち約1,200haが民有地で、今回の取得地もその一部です。土地の地権者である組合が解散するにあたり、早急に交渉を行う必要性があり土地の取得を進めることとなりました。
地域の宝を守りたい!という熱意
開発の可能性が高い民有地の買取を進めながら、自然を大切にするにはこの地を知り、好きになってもらうことが必要との考えです。地域の自治体や企業とのイベント開催や、全国や海外に向けて、ファンを増やしていくための発信をしています。
助成の結果
助成を通じて95.8haという広大な土地を購入することができ、同団体の保全地は約531haと大幅に拡大しました(2008年当時。2021年の保全面積合計は1063ha)。この土地はラムサール条約登録湿地になっている藻散布沼の周辺で、タンチョウの生息地にもなっており、霧多布湿原の保全上とても重要な土地が守られました。
第6期〜10期、第19期の助成先はありません
[取得地] 熊本県高森町 10ha
ハナシノブやツクシマツモト等、20種にも及ぶ絶滅危惧種が自生する阿蘇の草原
[助成額] 土地取得費516万円、維持管理費など234万円
[取得地] 北海道札幌市 0.4 ha
埋め立て等によって失われつつある、カラカネイトトンボなど希少な生きものの生息する篠路福移湿原
[助成額] 土地取得費730万円、維持管理費など70万円
[取得地] 北海道釧路市 15.5ha
道路建設工事が迫る、日本では釧路湿原でしか生息が確認されていないキタサンショウウオの生息する湿原
[助成額] 土地取得費:800万円
[取得地] 高知県四万十町 9.6ha
日本にの生息数わずか100~150羽、幻の鳥・ヤイロチョウの生息地として貴重な照葉樹の森
[助成額] 土地取得費581万円、維持管理費など70万円
[取得地] 熊本県阿蘇市 2.4ha
植林により消失が進む、マツモトセンノウなどの希少植物が多く生育する阿蘇の草原
[助成額] 土地取得費490万円、維持管理費など60万円
[取得地] 北海道浜中町・厚岸町 95.8ha
タンチョウもすむラムサール条約登録湿地に隣接する広大な森と湿地
[助成額] 土地取得費480万円、維持管理費など145万円
[取得地] 埼玉県桶川市 0.1ha
道路建設や河川改修などの開発が迫 るサクラソウなど希少な植物が生育 する湿地
[助成額] 土地取得費:716万円、維持管理費など67万円
[取得地] 長崎県対馬市 5.2ha
対馬にしか生息せず、絶滅の危機に瀕 しているツシマヤマネコの重要な生息 地となっている山林
[助成額] 土地取得費300万円
[取得地] 熊本県高森町 10.8ha
特定国内希少野生動植物種のハナシノブをはじめ、30種に及ぶ絶滅危惧植物のホットスポット
[助成額] 土地取得費700万円
[取得地] 高知県高岡郡四万十町 6.1ha
毎年5月頃に南方から九州や四国に飛来する渡り鳥、ヤイロチョウの生息する森として再生を目指す人工林
[助成額] 土地取得費300万円、維持管理など77万円
[取得地] 埼玉県飯能市 0.07ha
同会が里山活動に取り組んでいるトラスト保全1号地に隣接する、天覧山東側にある緑地
[助成額] 土地取得費80万円
[取得地] 新潟県新潟市北区 1.6ha
アサザやガガブタの群生をはじめとする潟固有の貴重な動植物がすむ、阿賀野川沿いの三日月湖「十二潟」の一部
[助成額] 土地取得費332.5万円
[取得地] 長野県北佐久郡軽井沢町 0.6ha
軽井沢の別荘地近くにあり、多種多様な動植物が生息する愛宕山の山頂付近の森
[助成額] 土地取得費235万円、維持管理など15万円
[取得地] 新潟県新潟市北区 1.6ha
対馬にしか生息せず、絶滅の危機に瀕 しているツシマヤマネコの重要な生息 地となっている山林
[助成額] 土地取得費200万円
[取得地] 静岡県三島市 0.16ha
三島市と沼津市の境界にある松毛川沿いで、都市部の貴重な水辺森林空間として残る河畔林
[助成額] 土地取得費239万円
[取得地] 茨城県土浦市
環境省「生物多様性保全上重要な里地里山」、環境省モニタリング1000里地コアサイトにも選定されている宍塚の里山(約100ha)で、トラスト活動推進のための土地所有状況調査費用
[助成額] トラスト候補地の土地所有状況調査費30万円
[取得地] 長野県北佐久郡軽井沢町 1.9ha
愛宕山の山頂付近のトラスト地(2017年に取得、0.6ha)に隣接した、多種多様な動植物が生息する森
[助成額] 土地取得費350万円
[取得地] 埼玉県比企郡鳩山町 0.9ha
戦後に次々と及んだ、産廃施設、ゴルフ場、ごみ処理場、メガソーラーなどの開発から、奇跡的に残る里山(通称、熊井の森約100ha)の一部
[助成額] 土地取得費(借地料)、トラスト団体の立ち上げにかかる費用、トラスト地の維持管理費:100万円
[取得地] 埼玉県比企郡鳩山町 1ha
「熊井の森」北側の入り口から近い、散策ルート沿いの森
[助成額] 土地取得費350万円
[取得地] 埼玉県比企郡鳩山町 0.4ha
「熊井の森」の中核をなす石場沼の水源エリアで、トウキョウサンショウウオやアカガエル等の生息する森
[助成額] 土地取得費(購入費・借地料)、維持管理費:180万円
[取得地] 埼玉県比企郡鳩山町 0.9ha
第17期で取得した森に近接し、多くの生き物の餌場として重要な森
[助成額] 土地取得費(購入費・借地料)、維持管理費:170万円
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